ピストルズ やがて哀しき独り言

東京・恵比寿で広告・Webプランニング・開発・制作会社を経営する3年目経営者の悲哀を語っていきます。 弊社URL→ http://www.pistil-pistol.co.jp

ジジイと入れ歯と有村架純。

先日、新潟の親戚のおじさんが上京してきたついでに浦和の実家に立ち寄るというので、僕も一緒に酒の席に着くという羽目になった。おじさんといってもすでに70を超えたじいさんなわけで、そのまま新幹線に乗って長岡まで帰りゃあいいのにと思うのだが、遠く離れた親戚に会うという機会は、いまではほとんど誰かが死んだときくらいなので、身内に不幸がないこういう時こそ一緒に酒を交わすものだという説得に負け、八海山を空けなくてはいけなくなったのだ。

年寄りの昔話と、延々とリフレインされるフレーズには毎度辟易するものだが、今回は僕が独立したということで、「偉い!よく決心した」などと浮かれた言葉を連発し、赤ら顔のおじさんは実に気持ちよさそうに八海山をぐびぐび呑みつづけるのだった。

別におじさんは酒乱ではないので極めて陽気に酒を飲む姿はなかなか男らしいし、好きなだけ飲んで酔うだけ酔ってそのまま寝てくれればそれでいいのだが、問題は御猪口の献酒・返杯を強要してくることだ。

自分で飲んだ御猪口に酒を入れ、僕に飲め飲めと強要するこの日本伝統スタイル。無理に酒を飲まそうという魂胆は別にどうでもいいのだが、70過ぎの入れ歯ジジイが口をつけた盃に自分も口をつけなくてはいけないというのは、どうしても気持ちが悪い。「ちゃんとポリデントしてんのかこのジジイは」とか、「本物の歯がないだろうから2,3日歯磨きしなくても平気なんじゃないか」とかいらぬ妄想が頭をよぎる。同じ妄想なら、有村架純あたりにお酌してもらって、「どうだおまえも一杯?」「んもう浩ちゃんたら、こんな幼い女を酔わせてどうするつもり?」「なに言ってんだよおまえ、こんな真昼間から」「そんなこと言って、浩ちゃんが私に何をしでかそうとしてるのかなんて、みえみえなんだから~」といった妄想に酔いしれていたい。

とはいえ断るわけにはいかないので、爺さんの唇がついていないだろう辺りに見切りを付けて、息を止めて一気に飲み干した。酒が空いた盃の中を見なければいいのだが、思わず目が盃の中の一点に注がれてしまったのが不幸の始まりである。小さな毛らしきものが張り付いているのである。

これは僕の眉毛またはまつ毛が落ちたのか。またはおじさんの眉毛またはまつ毛、または鼻毛が落ちて最初から浮いていたものなのか。少なくとも有村架純のまつ毛でないことは確かだ。僕はジジイの首を絞めて、この場で息の根を止めてやろうかとさえ思った。なにが身内の不幸が無い時こそ酒を交わすものだ、俺に不幸が降りかかっているじゃないか!いますぐにその細い首を絞め倒して、身内の不幸を起こしてやろうか!!

とにかく日本の伝統的風習というのは不潔なものが多い。勘弁してほしいわ、ほんとに。。。